数式

昨年末からの読書熱が割と続いていて、とりあえずはやってるっぽいのとか、なんとか賞受賞作とか、ばしばし固めて読んでおこう運動開催中。でも、サスペンスとか推理小説はあまり好みでないの。ムダにドキドキしてたくさん読んでしまって眠れないし。で、今年の賞のとかもほんとは読みたいんだけどハードカバー高いしなー、とか、本屋にうっかり入るといろいろ手にとっては逡巡して長時間うろうろすることもあったり。

で、どうしようっかなと思ってて。理数系の事柄がうまく組み込まれている小説が好きな方なので*1、気にはなってたんだけど、映画化だし、なんだかなー、と思ったけど、数学をモチーフにした小説なのがやっぱり気になって*2、「博士の愛した数式」を昨日思いかけず一気に読んだ。

80分しか記憶を持てない博士と家政婦ふかっちゃん(ってそれは映画のキャストだけど)とそのふかっちゃんの息子ルート君の日々。本当は大変な事だけれど、先生との関係を翌日にはまたゼロからはじめる、というリズムが上手く作用して、思ってたより淡々としていて、良かった。それに「博士の〜」中では、整数から素数にはじまり、いろんな定理がうまく物語に組み込まれ数字がちりばめられてて、おまけに博士の説明がやさしくて、ふかっちゃん(だからそれは映画)と一緒に、ちょっとうっとりしてしまいました。って、ほんとはこの本の感想としては、ここじゃないんだと思うんだけど。泣かせるための感動のあからさまな仕掛けとかいらないんすよって思って警戒してたけど、私にとっては途中そんな心配は無くなって、3人の日々を、息をひそめて一緒に暮らすように読んだ。でも、最後から10行目の一文で思いかけずふっと涙があふれた。悲しいとかかわいそうとかじゃないのよ。ほんとふと良かったの。いい小説でした。映画は見なくてもいいくらい。ふかっちゃんでてるからいつかは観ると思うけど。

*1:池澤夏樹の初期のものを読んだときに理数系の小説っていいなーなと思ったのです。ずいぶん前に。でもそれからあまりそういうのに出会ってない、つーか数読んでないのだけど。もともと池澤は地学だか火山学だかの人なので、初期はそういうのが色濃く出てた。「スティルライフ」という小説の、雪が降ってくる空を見上げてたら、雪が落ちてくるのか、自分が立っている地面が上に上がっているのかわからなくなる、というような書き出しにがつんとやられたのが最初。あとタイトル忘れたけど、ある場所にいかなきゃいけないかなんかなんだけど、でも地図の中にのってない場所で。なぜ地図にないかというと、その場所は谷かなんかの間にあって空から見ると、すごく狭い角度からしか見えないので衛星写真にうつらないとか。

*2:私はどちらかというと文系ですが、数学は別に嫌いではなく。中学では数学が苦手な時期があったけど、中学のとき、なんとかしたい、どっちかというと好きになりたかったので、ゼロの発見とか三角形の定理関係の発見とかが書いているやさしい数学の歴史の本を読んでみたら、すごく面白くて。で、がぜん興味がわいて。そこから得意にはなったんだけど。中学までの数学って言葉や絵で説明できるし。ただ、高校で虚数っていうのが私の想像を超えてしまってそこで挫折。だからそれ以降、数学に憧れみたいなものを抱いているのです。あの数式が美しいとか大学の数学科に通っていた友人が言うのとかすごく憧れてて。今でも数学を意味なく勉強したいと思うくらい。